下だけ裏側矯正する場合の費用とメリット・デメリット

歯列矯正は受けたいけれど、装置が目立つのが嫌だ。お口が汚れて虫歯や歯周病にかかりそうで不安。そんな方には裏側矯正がおすすめです。マルチブラケット装置を歯列の裏側に設置する矯正法なので、一見すると何も着けていないように見えます。

そんな裏側矯正に関して、「下だけ装置を裏側にすることはできますか?」という質問を受けることがあります。今回は下だけ裏側矯正する場合の費用やメリット・デメリットについて、名古屋市の星ヶ丘矯正歯科がわかりやすく解説をします。

裏側矯正(フルリンガル)とは

皆さんが歯列矯正と言われてまずイメージするのは「表側矯正」でしょう。歯列の表側にブラケットとワイヤーを装着する方法で、ご家族や友人、知人が治療を受けているのを実際、目にしたことがある方も多いと思います。なぜなら、表側矯正の装置は目立ちやすく、唇が少し開いただけでもその存在に気付くものです。

裏側矯正はそれとは逆の位置、つまり歯列の裏側に矯正のパーツを装着する方法で、舌側矯正と呼ばれることもあります。その中でも装置を上下ともに裏側に着ける方法を「フルリンガル」、上だけ表側に着ける方法を「ハーフリンガル」と呼びます。ただ、今回のテーマは“下だけ裏側矯正する方法”なので、いわゆるハーフリンガルとは少し話が変わってきます。

下だけでも裏側矯正できる?できない?

結論から言うと、下だけ裏側矯正することは理論上、可能です。そもそもフルリンガルでは、上だけではなく下も裏側にブラケットを装着するからです。上だけ表側矯正にするケースはなかなか稀ではありますが、患者さんの強い希望があれば、それを断る理由はありません。ただし、ハーフリンガルによるメリットは、下だけ表側にすることで最大限得られるようになることだけは強調しておきます。

下だけ裏側矯正するメリット・デメリット

下だけ裏側矯正にすると、次に挙げるようなメリットとデメリットを伴います。

メリット

下の装置が目立ちにくくなる

下だけ裏側矯正にすると、当然ですが下の装置が目立ちにくくなります。もともと口を開けた時に下の前歯が目立ちやすい人には、下だけ裏側矯正にするメリットもそれなりに大きいといえます。上は標準的な表側矯正となりますので、治療中であることは気付かれやすいです。

フルリンガルよりも費用が安くなる

裏側矯正は、特別なパーツや器材、高度な技術を要することから、表側矯正よりも費用が高くなります。その影響は上下ともにリンガルブラケットを使用するフルリンガルで最大となり、下だけ裏側矯正にするハーフリンガルでは、費用を少し抑えることが可能です。

歯列矯正は、原則として自費診療となるため、どのくらいの費用がかかるかは歯科医院によって大きく異なります。その上で大まかな目安を言うと、下だけ裏側矯正にすることで、200,000円前後安くなるケースが多くなっています。ですから、「裏側矯正は受けたいけれど、費用が高い点がネックとなっている」という場合は、ハーフリンガルを検討してみても良いでしょう。

滑舌への影響を最小限に抑えられる

裏側矯正の装置は、滑舌への影響が比較的出やすいです。歯列の内側にブラケットやワイヤーがあると、舌の動きが制限されてしまうからです。今回のケースのように、下だけ裏側矯正にした場合は、滑舌への影響を最小限に抑えることが可能となります。とくに上の歯列の装置は、サ行やタ行、ラ行といった重要な発音を妨げることが多いため、下だけ裏側にするメリットはそれなりに大きいといえます。

上下の装置が接触しにくい

下だけ表側矯正のハーフリンガルでは、上の装置が裏側に設置されているため、上下で接触や干渉が起こりやすいです。その結果、噛み合わせを一時的に上げたり、上の前歯を前方に傾けたりする処置が必要となります。一方、下だけ裏側矯正のハーフリンガルでは、上下の装置が互い違いの関係となることから、そうしたトラブルを回避しやすくなると言えます。

デメリット

上の装置は目立ちやすい

繰り返しになりますが、いわゆるハーフリンガルの治療では、上だけ裏側矯正を行います。下の歯列は笑った時や口を大きく開けた時でもそれほど目立たないことから、下だけ表側にしても問題がないケースが多いのです。それをあえて下だけ裏側矯正にすると、上の装置は目立ちやすくなり、矯正中もいろいろな場面で不便を感じることになりかねません。ハーフリンガルで下だけ裏側矯正にする場合は、その点を正しく理解しておく必要があります。

表側矯正よりも費用が高くなる

下だけ裏側矯正にした場合は、上下ともに表側矯正を選択した場合よりも費用が高くなります。また、裏側矯正を適切に行える歯医者は、全国あまたある矯正歯科の中でも一部に限られます。裏側矯正に対する知識や技術が乏しかったり、経験が浅かったりする場合は、治療が失敗するリスクもありますので、十分な注意が必要です。

表側矯正よりも治療期間が長くなりやすい

矯正力は、歯列のどの位置からかけるかによっても、得られる効果が大きく変わります。一般的には、歯列の裏側から矯正力をかけるほうが長い時間を要します。つまり、下だけ裏側矯正を選択した場合は、標準的な表側矯正よりも治療期間が長くなりやすいのです。そのデメリットも勘案した上で、下だけ裏側矯正にすることを検討する必要があります。

ハーフリンガルは下だけ表側矯正がオススメ

このように、下だけ裏側矯正のハーフリンガルには、標準的な表側矯正や上だけ裏側矯正のケースとはまた違ったメリット・デメリットを伴うことになります。上でも何度か述べたように、下だけ裏側矯正にするメリットはそれほど大きくはないため、基本的には上だけ裏側矯正にすることをおすすめします。

まとめ

今回は、下だけ裏側矯正にする場合の費用やメリット・デメリットについて、名古屋市の星ヶ丘矯正歯科が解説しました。下だけ裏側矯正にするハーフリンガルはかなり稀なケースなので、関心のある方はお気軽に当院までご相談ください。上だけ裏側矯正にするハーフリンガルの疑問や質問にも矯正認定医の院長がわかりやすくお答えします。当院はリンガルブラケット装置(裏側矯正)に力を入れている歯医者さんです。

著者プロフィール
矯正歯科医師:亀山威一郎

星ヶ丘DC矯正歯科:医院長・愛知学院大学歯学部非常勤講師 ・日本矯正歯科学会 認定医 ・ヨーロッパ舌側矯正歯科学会 専門医 ・世界舌側矯正歯科学会 認定医 小学生のとき矯正治療をするも、保定装置を使わなかったため後戻りし中学生で再治療を経験。そんな子供時代を過ごしながら歯科医師を志す。過去を振り返ったときにあのときに矯正してよかったと思える治療を目ざしています。

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