裏側矯正をやめたいと思ったら読む記事。やめたくなる理由とやめるリスク

歯列に裏側にブラケットとワイヤーを設置する「裏側矯正」は、見えない矯正の決定版といえるくらい審美性に優れています。そのため芸能人やタレントといった“見られる”ことが職業の方にも広く、支持を集めている矯正法となっています。

そんな裏側矯正を検討中の方は、歯磨きがどうなるのか不安に感じていることでしょう。マウスピース型矯正はもちろん、標準的な表側矯正よりも歯磨きがしにくそうなイメージをお持ちの方も多いことかと思います。

裏側矯正をやめたくなる主な理由

裏側矯正をやめたいと思う理由としては、以下の5つが挙げられます。

理由1:歯磨きしにくい

裏側矯正は、歯列の裏側にブラケット装置を固定するため、歯磨きをする際には工夫が必要となります。鏡でも確認できない部分があることから、本当に磨けているか不安になったり、歯磨きに時間がかかることに強いストレスを感じたりする方もいらっしゃいます。そうした歯磨きのしにくさから、裏側矯正はもうやめたいと思うようです。

理由2:しゃべりにくい

歯列の裏側に設置された装置は、舌の動きを制限することがあります。舌は発音にも深く関わっている器官なので、その運動が邪魔されると、しゃべりにくさを感じるようになります。裏側矯正に伴う発音障害は、数週間も経過すれば軽減されていくものですが、それでもなお装置による違和感や異物感で拭うことができない場合もあります。

理由3:痛みがつらい

歯並びの乱れを細かく整える歯列矯正には、必ず痛みを伴います。それは裏側矯正も例外ではありません。歯槽骨にしっかりと埋まっている歯を人為的に動かすのが矯正ですので、ワイヤーを調整した直後などはとくに痛みます。ただ、標準的な表側矯正と比較すると、裏側矯正は装置の刺激による痛みは少ないといえます。リンガルブラケットは、唇や頬の内側の粘膜を傷付ける恐れがないからです。

理由4:治療期間が長い

裏側矯正は、標準的な治療法とは少し異なるメカニズムで歯を動かすため、治療期間が長くなる場合もあります。その点は、精密検査の結果が出た時点でお伝えすることができるのですが、いざ矯正を始めてみると、治療期間の長さを実感してやめたいと感じるケースがあります。とくに歯並びの乱れが大きい場合は、「この治療をあと2年も続けなければならないのか」とネガティブになってしまうこともあるでしょう。

理由5:好きなものを自由に食べたい

ブラケット装置を用いた矯正治療には、食事制限を伴います。極端に硬いものは装置の故障につながり、粘着性の高いものは口腔衛生の低下を招くことがあるため、好きなものを自由食べるという生活は、少しの間、我慢しなければなりません。そうした食事制限がつらくて裏側矯正をやめたいと思う人もいらっしゃいます。

裏側矯正を途中でやめるリスク

裏側矯正を途中でやめると、さまざまなリスクが発生します。今現在、裏側矯正をやめようか迷っている方は、少なくとも以下の4つのリスクは把握するようにしてください。

リスク1:歯の後戻りが生じる

矯正治療は、保定処置まで行って初めて完結するものです。治療期間の途中でやめると、ほぼ確実に歯の後戻りが生じます。矯正を始める前とまったく同じ状態まで戻ることもありますし、元の状態より歯並びが悪くなるケースもありますので十分な注意が必要です。矯正治療は途中でやめることを前提としていないため、中断による歯列への悪影響は極めて大きくなることが多いです。

リスク2:噛み合わせが悪くなる

矯正中は、噛み合わせが目まぐるしく変化します。1本の歯を動かすだけでも、全体の噛み合わせは大きく変わってしまうからです。そのため矯正治療では、噛み合わせが理想的な状態に仕上がるのは、終盤に入ってからとなっています。それは裏側矯正も表側矯正も同じです。つまり、裏側矯正を途中でやめると、悪い噛み合わせが残ってしまうことから、見た目だけでなく、そしゃく機能にもデメリットが生じるのです。

リスク3:治療費は返金されないことが多い

裏側矯正を途中でやめると、支払った費用が無駄になることもあります。というのも、矯正治療の費用は、返金されないケースが珍しくないからです。どの段階で裏側矯正をやめるかにもよりますが、もうすでに装置を作って装着している以上、支払った金額の大半は戻ってこないことが多いといえます。矯正治療を途中でやめた場合の返金対応については、歯科医院によって方針が異なるため、一概に語ることは難しいのが現実です。

リスク4:矯正を再開する場合は検査からやり直し

矯正をやめてからしばらく経つと、「やっぱり歯並びをきれいにしたい」と思い直すことがあるかもしれません。その際、改めて矯正の歯医者さんを受診した場合は、基本的に検査からやり直すことになります。過去に途中まで裏側矯正をやった経験があるからといって、治療のプロセスが簡略化されたり、費用が安くなったりすることはまずありません。ですから、またやりたくなったら再開すればいい、という軽い考えで矯正をやめることはあまりおすすめできません。

それでもやめると決めた方へ

ここまで説明した通り、裏側矯正を途中でやめることにはいくつかのリスクを伴います。それでも矯正をやめたい、不便な生活から解放されたいという方は、主治医にその意向を伝えましょう。矯正治療は、患者さんの意志で行うものなので、歯科医師が無理に止めるようなことはありません。

まとめ

今回は、裏側矯正を途中でやめたいと思う理由とやめた場合のリスクについて、名古屋市の星ヶ丘矯正歯科が解説しました。裏側矯正は、数ある装置の中でも極端に不便が多い矯正法というわけではありません。ただ、裏側矯正ならではの苦労もあるかと思いますので、つらい思いや不便な生活に耐えられなくなった場合は、まず主治医に相談しましょう。経験豊富な歯科医師であれば、さまざまな解決法を提案できます。それでも解決できない問題が残るようであれば、裏側矯正を途中でやめても良いといえます。

著者プロフィール
矯正歯科医師:亀山威一郎

星ヶ丘DC矯正歯科:医院長・愛知学院大学歯学部非常勤講師 ・日本矯正歯科学会 認定医 ・ヨーロッパ舌側矯正歯科学会 専門医 ・世界舌側矯正歯科学会 認定医 小学生のとき矯正治療をするも、保定装置を使わなかったため後戻りし中学生で再治療を経験。そんな子供時代を過ごしながら歯科医師を志す。過去を振り返ったときにあのときに矯正してよかったと思える治療を目ざしています。

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