裏側矯正への思い
神経を抜かなくても、歯並びはキレイにできます
私は愛知学院大学歯学部を卒業後、矯正学講座に無給で在籍していました。当時は多くの先生が同じように無給で学びながら過ごしており、私も生活費のすべては歯科医師としてのアルバイトでまかなっていました。医局員時代には最大で10か所の歯科医院でアルバイトをしていたほどです。
アルバイトでは、普段出会うことのないさまざまな患者さんと接することができる点にあります。その中で、今でも印象に残っている出来事があります。
ある歯科医院で、モデル事務所とつながりがあるのか、モデルやその卵たちが多く通っている医院がありました。ある日、そこに長身の女子高校生が来院し、院長から「前歯6本の神経を抜いて、かぶせ物をする」との指示を受けました。
口の中をみると、確かに前歯はガタガタで、このままではモデルとして活動するのが難しいだろうと思える状態でした。
指示通り麻酔をして、罪悪感を抱きながら神経を抜きました。後日、その前歯6本は削られ、差し歯(セラミック)に置き換えられ、治療が完了しました。いわゆる「セラミック矯正」と呼ばれる治療法で、見た目を優先して前歯を差し歯にする方法です。
当時の私は若く、指示に従って治療をする立場でしたが、心の中では「この症例は矯正治療でも十分に治せるのでは」と感じていました。もし今の自分だったら、彼女には裏側矯正(舌側矯正)を提案していたと思います。裏側からの矯正であれば、見た目を気にせずに治療ができ、モデルの仕事にも支障がありません。高校生であれば、2年以内には治療も終わる見込みです。

私自身も、学び続けています
大学では表側矯正は教えてもらえますが、裏側矯正は基本的に独学で学ぶしかありません。
私も開業するまでは裏側矯正の存在を知っている程度でしたが、開業後にどうしても裏側矯正を習得したくなり、数多くの講習会に参加しました。
中には、実際にその技術を持つ先生のもとに直接教えを乞うこともありました。
少しずつ学びながら技術の習得を行ってきました。
試行錯誤しながら舌側矯正が色々なケースで治療が出来るようになりました。
裏側矯正治療を行った結果を他人に評価してもらい自分の力量を試す為にパリで開催された世界舌側矯正歯科学会やスペインで開催されたヨーロッパ舌側矯正歯科学会に治療症例を出してチャレンジし認定医を取得しました。
2024年には日本舌側矯正歯科学会の認定医にも裏側矯正で治療した5症例を提出し無事合格しました。

今では裏側矯正が一般的に知られるようになり患者さんからも普通に聞かれることも多くなりました。
矯正装置が見えるのが気になる方は裏側矯正で治療をすることをオススメしております。固定式装置なのでマウスピースのように着脱の煩わしさがありません。一日20時間以上使ってくださいということもありません。固定式なので着脱式装置よりも早く治療を終えることが出来ます。治療中のみた目は気にならない矯正治療になります
裏側矯正とセラミック矯正の違いって?
裏側矯正(舌側矯正)
歯の裏側に装置をつけて少しずつ歯を動かしていく方法です。見た目を気にせずに治療ができ、歯を削ることもありません。高校生くらいであれば、通常2年以内にはきれいに治療が終わります。
- 健康な歯を守れる
- 見た目を気にせず治療可能
- 歯の寿命に影響しない
セラミック矯正
歯を大きく削って神経を取り、見た目のきれいな人工の歯(差し歯)を被せる治療です。短期間で歯並びを整えられますが、歯の寿命が短くなってしまうリスクもあります。これを矯正と呼ぶ事にも違和感は感じます。
- 健康な歯を削る必要がある
- 神経を抜く場合が多い
- 歯の寿命が短くなるリスク
裏側矯正装置の作成
裏側矯正では、装置を歯の裏側につけるため、表側の矯正のように目で見ながら装着することが難しく、より高い技術が必要です。
また、裏側の装置を作るには、まず患者さんの歯型を取り、それを最終的な理想の歯並び(セットアップ)に合わせて作り直します。その歯型に合わせて、一つ一つの装置を丁寧にオーダーメイドで作成していきます。
このように、裏側矯正は工程が多く手間がかかるため、どうしても費用が高くなってしまう傾向があります。

模型上で装置の位置決め

歯の裏側に装置を合わせます
装置の付け方

装置をつける歯の清掃

装置を歯につけて光照射

ワイヤーを通して装着完了
固定式装置なので、マウスピースのような着脱の煩わしさがありません。
一日20時間以上使用という制約もなく、確実に治療が進みます。
裏側(リンガル)矯正の歯抜けの隠し方
裏側矯正は、装置が歯の裏側につくため、見た目が気になる方に選ばれることが多い治療方法です。
治療の内容によっては、歯を抜いてスペースを作る必要がある場合もあります。抜歯後は一時的に隙間が空きますが、その隙間が目立たない程度に閉じるまでには半年以上かかることもあります。そうした隙間が気になる方には、見た目の違和感を軽減するために「ダミーの歯(仮歯)」を装置につけることができます。これは裏側矯正ならではの対応で、歯が抜けたように見えるのを防ぐことができます。
当院では、ご希望の方にはこの仮歯を無料でおつけしております。ご希望やご不安な点がありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

歯を抜いた状態

仮歯(ダミー)を装着
抜歯が必要な場合も院内で対応
抜歯後の隙間は仮歯で隠すため、見た目を気にする必要はありません(無料)
メリット・デメリット
メリット
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装置が見えない
正面からは全く見えないため、人前でも気になりません
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虫歯になりにくい
歯の裏側は唾液の自浄作用が働きやすい環境です
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前歯が後退しやすい
出っ歯の改善に特に効果的な治療法です
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舌癖の改善
装置により舌の悪い癖が自然に改善されます
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確実な治療効果
固定式なのでマウスピースより早く確実に治療出来ます
デメリット
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費用が高い
オーダーメイドの装置と高度な技術が必要なため
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慣れるまで時間がかかる
最初は舌に違和感を感じる場合があります
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発音への影響
サ行・タ行・ラ行が発音しづらくなる場合があります
-
高度な技術が必要
認定医など専門的な技術を持つ医師が限られます
症例
治療前

治療後

治療前

治療後

治療前

治療後

治療中上顎

治療中下顎

症例詳細
初診時年齢 | 24才 |
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主訴・歯並び | 開咬、前歯が出ている |
治療費 | 1,265,000円 |
治療期間 | 1年10ヶ月 |
治療内容 | 非抜歯、小臼歯4本抜歯、リンガルブラケット装置(裏側矯正) |
副作用・リスク | ブラッシング不良によるカリエス、歯肉退縮、歯根吸収 |
料金
カウンセリング・初診相談 | 3,300円 |
精密検査 | 55,000円 |
裏側矯正(上下顎) | 1,320,000円〜 |
ハーフリンガル(上のみ裏側) | 1,100,000円〜 |
処置料(月1回) | 5,500円 |